典型的な接骨院業務からの脱皮
開業10年目を迎えた今年、本会役員の児島太一先生(熊本市)は、これまでの保険診療を主としてきた接骨院業務からの脱皮を決意し、自由診療型のダイナミックロト・セラピーモデル治療院として「鍼治療とリハ運動の融合」を掲げた機能回復型の治療院への第一歩を踏み出しました。
これまでのように、単に疼痛緩和だけを業務のゴール設定にするのではなく、鍼治療で動きが改善したところで、理学療法士によるリハ運動指導をセットで受けられるという機能回復まで見据えたサービスを提供し始めたところ、瞬く間に評判は広がり、将来の健康寿命に不安を抱く中高年患者層に広く受け入れられました。その結果、週に1日(土曜日)から試験的に始めた予約制の治療枠も、2週間先まで直ぐに満杯になる盛況ぶりをみせ、3カ月経った今では早くも治療日の増設やスタッフの増員まで検討する状況となり児島院長自身も驚いています。
健康寿命に直結する慢性疾患に対する積極的に踏み込んだ対応を治療院側に希望する方は意外に多いことが判明し、QOLの向上や体力アップを希望して来院する患者数の増加傾向は顕著となっております。初診時には酷く跛行していた膝関節症の患者も、鍼治療により疼痛緩和を図った後に、円皮鍼を貼付したままでの運動鍼療法(リハ運動)を実施したことで、早期にスムーズな歩行を取り戻せるようになったとの報告を受けました(動画参照)。このように鍼治療+リハ運動の成果は、受療者ご本人にもタブレット上の動画で確認頂いており、受療者の通院意欲の向上に役立っているようです。
新時代におけるコメディカル異業種連携の新しい形
ダイナミックロト・セラピーとは、「回旋」と「動き」をテーマにした、動的な臨床スタイルを特長にした治療法です。鍼をしたらそのまま寝かせておくのではなく、直ぐに捻じり動かし、局所から全身までの滑らかな運動連鎖を取り戻していく治療法であるが故に、動きの専門家である理学療法士との業務連携が実現できれば理想的であることは言うまでもありません。そこで同業者の皆さま方にご提案したいのが、鍼灸師と理学療法士との業務連携の導入とその方法であります。
近年の社会的大きな変化の一つとして、企業でも副業が認められるようになってきたことが挙げられます。これは医療の世界でも例外ではなく、大病院に勤務していながら、院外でも就労意欲のある理学療法士に対しては副業を認める病院が増えてきました。そこで、開業権のある鍼灸師や柔整師が経営する治療院にて、常勤ではなく、歩合制や時間制で理学療法士を雇い入れることも可能となりました。これは、開業権の無い理学療法士にとっても副業による増収というメリットに与れるばかりか、経営側にとっても、必ずしも社員として雇用する必要も無いことから経営上のメリットもあるわけです。連携する理学療法士には、鍼治療に対する知識は勿論のこと、病院とは異なる治療院ならではの業務スタイルへの理解を深めて頂いた上で就労して頂きます。その上で、ダイナミックロト・セラピーの理論や技法を学んで頂くことで、鍼灸・柔整師とも密接な業務連携を確立することができ、理想的な機能回復型の治療院を経営していくことが可能となります。今回の児島先生の治療院でも、これらのハードルを一つ一つクリアした上で見事治療院のリニューアルに成功し、コメディカル異業種連携を成し遂げられることを実証できたかたちとなりました。
日本に合った業務形態
海外では鍼治療が想像以上に普及しており、理学療法士が鍼治療を合法的に行える国も多いことをご存じでしょうか?因みにオーストラリアの理学療法士は、独立開業権もあって社会的地位も高いのですが、その9割の理学療法士達が鍼治療を日常的に活用しており、彼らの本業である運動療法や徒手療法との業務上の相性も抜群とのこと。
オーストラリアにおける鍼治療の国民受療率が日本よりもはるかに高い理由は、理学療法士が盛んに鍼治療を行っていることに起因しているわけで、それは同時に鍼治療と運動療法との併用による効果が高いことの証でもあるわけなのです。
ご承知のとおり日本の理学療法士には独立開業権のみならず、鍼治療も許されていないため、法規上鍼治療と運動療法は分離されており、一人の資格者から双方の治療を受けることは難しいのが現状です。
しかしこの業務連携のスタイルを日本の治療院レベルで普及させていくことができれば、海外と同等のレベルにまで到達できるようになるだけでなく、ダイナミックロト・セラピーの動的鍼治療も同時に普及させることが叶うのではないかと考えているところです。
これからの前途多難な時代にあって、治療院経営の将来に危惧を抱き、治療院のリニューアルを真剣に検討し始めている方は、是非本会にご相談下さい。きっと新たな扉を開くことができることでしょう。